1988.5.1
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風俗図(彦根屏風) |
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風俗画(彦根屏風)
彦根屏風は、代々彦根藩主であった井伊家に伝わったためこの名で呼ばれ、江戸時代初期に盛んに制作された風俗図の中でも傑出した作品として広く親しまれています。
画面は、背景を全面金箔(きんぱく)でうめつくすなかに、遊里に遊ぶ15人の人物を描き、左端に画中画として山水図屏風を配したものです。それぞれに華やかな衣装を身につけるこれらの人物のポーズや表情には、きわめて洗練され、研(と)ぎ澄まされた感覚がみられます。表紙写真は、彦根屏風の中でもっともよく知られている人物ですが、唐輪髷(からわまげ)に結った髪の毛の繊細さ、切れ長の目、お歯黒をのぞかせる小さな口、そしてなで肩の細い体にまとった絹の小袖の風合いなどは、この絵の作者のただならぬ力量をうかがわせています。
この絵は、人物の髪型や衣装の特徴から、江戸時代初めの寛永期(1624〜1644)に制作されたと考えられています。そして、この絵の舞台は、当時の京都の文化人サロンのような役割を果たしていた六条柳町の遊里ではないか、という説もあります。ここは、高い教養を身につけた遊女たちとパトロンを擁し、相当質の高い文化を誇っていました。綿密に描かれた高価な調度類や豪華な衣装、そして何よりも個性豊かに描き分けられた登場人物たちは、この絵が特定の遊里、実在した人物を描いたことを示しているのかもしれません。
絵の構成は、向かって右から第1・2扇は戸外、あるいは草履をはいていないところから室外を表し、第3・4・5・6扇で座り姿の人物を描いて、室内での遊楽の様を表しています。第3扇の部屋に駆け込んできて立ち姿の人物を指さしながら何事かを告げている禿(かむろ)が、この2つの場面をつなぐ役割を担っています。この絵では、このほか、それぞれの人物が微妙な対応関係によって、すぐれて綿密に構成されており、一種の冷たさまで感じられるほど計算され、考えぬかれた人物配置がみられます。このことからこの六曲一隻(ろっきょくいっせき)の画面の中に、1つの屏風劇を読みとる説もあります。劇は、右から左へと進み、始まりと終わりは、両端の、ともにうつむいて顔をみせない人物によって告げられており、右端を含めて3人の禿が、起・承・結の展開を示しています。そして華やかな衣装の男女が物語を演じている、というものです。
彦根屏風は現在、6面の額装となっていますが、彦根城博物館では、複製を屏風仕立てで製作しました。幾通りもの読み方を許すこの屏風を本来の姿に近い形でご覧いただけます。
金箔にぬりこめられた、この抽象的な世界で語られている言葉は、今の私達にはしかと聞きとれません。しかし、そこには遊里という享楽的な場所が、その豪奢さのかげにひそませている、もの憂さ、倦怠が見事にとらえられています。これが彦根屏風の特色であり、その極度に完成され、濃縮された人物表現は江戸時代の風俗画の最高峰に位置するといえるでしょう。
(竹村)
井伊家伝来
刀剣と刀装の美
期間 1988年6月5日(日)〜7月3日(日)
扇面散図鐔
銘柳川直政(花押)
江戸時代
菊花透図鐔
銘長州萩住糸賀職幹作
江戸時代博物館では、刀剣(とうけん)と鞘(さや)や鍔(つば)などの刀装(とうそう)の魅力を紹介する特別展を開催します。
刀剣は、戦乱の時代に終わりを告げた江戸時代になっても武家の表道具として重視され、各大名家では数多くの名刀が蒐集されました。武家の儀礼にかかわる贈答品としても重要な意味をもっていました。この特別展では、井伊家伝来資料を中心に館外からも資料をお借りして、重要文化財の刀剣5点を含む89点を展示し、刀剣や刀装に表された美意識と刀剣のもつ文化的意義にも表された美意識と刀剣のもつ文化的意義にもスポットをあてて紹介します。
期間中、次の関連行事も開催しますので、是非この機会を逃さずご観覧ください。
■講演会
1988年6月18日(土)
「刀剣と刀装の美−井伊家伝来品を中心に−」
講師 稲田 和彦氏(京都国立博物館)■映画
1988年6月25日(土)
「日本刀の美−月山貞一−」
「刀装職人の技−つかまき師・はばき師−」■講座
1988年7月2日(土)
「武家儀礼と刀剣」
講師 母利(もり) 美和(彦根城博物館)