彦根城博物館だより

Hikone Castle Museum News 5

1989.5.1


button 能装束 唐織
button テーマ展遊ぶ
button テーマ展鳥・獣・虫・魚
button テーマ展和様・唐様

こまやかな美の感覚
能装束 唐織(からおり)
(紅紫段扇面(べにむらさきだんせんめん)と団扇形(うちわがた)に
 鉄線花(てっせんか)と菊萩束文様(きくはぎたばもんよう))

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 日本の文様は、こまやかな、やさしい美しさに見どころがあります。

 春夏秋冬の季節の変化にとみ、微妙なあじわいにあふれた日本の風土が生みだした美の感覚といえるでしょう。

 春の梅や桜、秋の紅葉はいうまでもなく、椿・柳・藤・松などのありふれた花木から、萩・桔梗(ききょう)・女郎花(おみなえし)・菊などの野辺の草花、河骨(こうほね)・沢瀉(おもだか)・水葵(みずあおい)・葦など水辺の草にいたるまで、ありとあらゆる身辺の草木が対象になります。

 さらに、雀や千鳥などの小鳥たちや、苫船(とまぶね)・蛇籠(じゃかご)といった自然の景物、扇子や市女笠(いちめがさ)、熨斗(のし)・御所車(ごしょぐるま)・巻物などの器物もまた強く人々の心をとらえました。

 このように、日本の美意識は、日常ありふれたなんでもないものに目をとめ、それをとりあげて、デザインとして昇華するところに特色があります。そこには、日本独自の、美に対する優美な感覚を生みだした、平安時代の王朝文化へのあこがれが、根底に流れています。

 日本の文化を代表するもののひとつに、室町時代のはじめ頃に観阿弥(かんあみ)・世阿弥(ぜあみ)親子によって大成された能があります。

 この能に用いられる装束には日本風の「和様(わよう)」の文様と、中国風の「唐様(からよう)」の文様とが、役柄によって見事に使いわけられています。女性の役に用いる唐織や長絹(ちょうけん)には優美な和様の文様、男性の役に用いる法被(はっぴ)や厚板(あついた)には、龍や獅子、亀甲・稲妻などの強い唐様の文様が使われています。

 能装束には、日本人の文様に対する美意識が端的にあらわれているといえましょう。

 さて、この江戸時代後期の唐織には、和様の美が凝縮されています。地は紫と紅との段片身替(だんかたみが)わり。ひとつひとつの文様をたどっていくと、地文様には扇子と団扇、上文様に菊と萩の花束、鉄線花を散らしかけているのが浮びあがってきます。

 秋草の風情は、古来、日本人がもっとも好み、親しんだ主題のひとつです。このさりげないモチーフを、金をまじえた多彩な色糸で織りあらわし、豪華な1領に仕立ているのです。

(齋藤)

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テーマ展
遊ぶ
 期間 1989年4月19日(水)〜5月29日(月)

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テーマ展
鳥・獣・虫・魚(とり・けもの・むし・さかな)
 期間 1989年7月5日(水)〜8月29日(火)

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 美術工芸品には、動物を題材としたものが数多くみられます。鳥や獣・魚や昆虫など、様々な生き物たちの変化に富んだ姿や動作には、私たちの心をひきつけるものがあるからでしょう。また、特定の動物をその性質などから、象徴として表現することも行われました。たとえば、七福神の一つ、寿老人は、鹿を連れているとされます。写真の「鹿図」は、一番(つがい)の鹿を中心として、下方には霊芝(れいし)(万年茸)が描き添えられ、長寿や幸福をあらわす吉祥画の意味が含まれています。

 種々の動物たちをとらえた、多彩な表現をお楽しみください。

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テーマ展
和様・唐様(わよう・からよう)
 期間 1989年6月1日(木)〜7月2日(日)

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 日本では、中国のことを「唐(から)」と呼び、中国的なものを「唐様」という言葉でいいならわしてきました。一方、これに対する日本的なものが和様です。

 「和様」と「唐様」とは、日本の文化や歴史のあらゆる面に読みとることができます。

 それは、日本人の生活のすみずみにまでいきわたり、時と場合によって使いわけがされてきました。わたしたちの美意識の根底を流れる潮流であるといえましょう。しかし、このふたつは、けっして対立するものではありません。いわば貨幣の表裏のように、あるいは車の両輪のように、このふたつがあってはじめて完結するのです。

 今回は、「和様」と「唐様」の美意識が、もっとも端的にあらわれている文様にスポットをあて、このふたつを対比して展示します。

■関連講座

1989年6月10日(土) 午後2時から
「秋草の美学」
  講師 学芸員 齋藤 望

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