1991.8.1
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唐物の華 |
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唐物(からもの)の華(はな)
禾目天目茶碗
(のぎめてんもくちゃわん)
手に触れ、口に触れ、私たちの生活の中でたいへん身近なものに焼き物の茶碗があります。この茶碗、昨今では飯を盛る際にも用いられますが、本来は文字どおり茶を飲むためのもの。茶の湯の世界では、古くから人気のある茶道具です。
茶の湯で用いられる茶碗は、和物(わもの)(国産)のほか唐物(からもの)(中国製)や高麗物(こうらいもの)(朝鮮製)があり、時代の移ろいとともに変化する人びとの美意識に応じて、その好みをさまざまに変えながら今日に至っています。わが国に中国から喫茶の法が伝えられたのは鎌倉時代頃のこととされますが、それに前後して唐物茶碗が日本にもたらされました。やがて唐物茶碗は、室町時代の書院茶の流行とともに茶碗の主流をなすようになります。唐物茶碗としては、天目茶碗や青磁茶碗などがよく知られています。なかでも天目茶碗は、書院茶の中で重要な地位を占め、天目代に乗せて丁重に取り扱われました。足利将軍家の会所の飾りや蔵品などを記した『君台観左右帳記(くんだいかんそうちょうき)』をみると、書院茶の舞台ともなる書院は、唐物万能といっても過言ではないほど唐物の作品で荘厳(そうごん)され、蔵品の「土之物」つまり焼物の頃は、唐物茶碗の記載が連綿と続いています。その筆頭を飾るのは、美しさと希少性ゆえに名器としての誉れ高い曜変天目茶碗(ようへんてんもくちゃわん)。次いで油滴天目茶碗(ゆてきてんもくちゃわん)。3番目に登場するのが、ここで紹介する禾目天目茶碗です。
この禾目天目茶碗は、中国宋代に福建省陽県にある建窯で焼かれた作品です。建窯の近くには禅寺の名刹をいくつも抱えた天目山がそびえており、日本から留学した禅僧の多くも、この地で修行の日々を過ごしました。彼らは帰国に際して、寺院で学んだ喫茶の法とともに、寺院の什器である建窯の茶碗をも日本にもたらしたため、以後この種の茶碗を天目茶碗と称するようになったといいます。茶碗の胴部は朝顔形に開き、口造(くちづく)りは鼈口(すっぽんぐち)。口縁には銀の覆輪(ふくりん)がめぐっています。高台(こうだい)は比較的小さな輪高台。黒褐色の素地(きじ)に黒釉がぽってりと掛かっていますが、よくみると、黒釉の中に含まれる鉄の結晶が、黒釉の流下とともに筋状になって釉上に美しく浮かんでみえます。この筋を、中国では兎の毛になぞらえて兎毫盞(とごうさん)といい、日本では稲や麦の穂先の禾に見たてて禾目と呼んでいます。茶碗を納めた箱の蓋表には、江戸時代初期の茶人、土肥二三による「けんさん茶碗」の箱書があり、いつ頃のものかこの茶碗の評価を金五両とする書付が添っています。
(谷口)
祈りの造形
−近江・彦根の仏教美術−
期間 1991年10月26日(土)〜11月25日(月)東の鈴鹿山系を背にして西に琵琶湖をのぞむ彦根の地は、古く白鳳時代から仏教文化がはぐくまれ、奈良・平安・鎌倉から江戸時代にいたる各時代を通じて、その精華を花開かせてきました。その心は今でも村々の寺院や神社に息づいています。そして、ここには多くの仏像や仏画、仏教工芸をはじめとする仏教美術が現在に伝えられているのです。まさに、彦根は「仏の坐(いま)す地」であるといって過言でありません。
しかし、これらの仏教美術はこれまであまり紹介されたことがなく、ほとんど世に知られていないのが現状です。この企画展では、この中から、美術史の観点から見て優れた作品や歴史上重要な作品を一堂に会し、はじめて彦根の仏教美術の全貌を明らかにして、私たちの先人がつくり上げそして守り伝えてきたかけがえのない仏教文化の遺産をご静鑑いただこうとするものです。
■関連講座
(1)1991年11月2日(土)「千手寺の僧形坐像」
講師 京都精華大学 山名 伸生氏(2)1991年11月9日(土)「湖東の古代寺院」
講師 本館学芸員 谷口 徹(3)1991年11月16日(土)「浄土教の絵画」
講師 京都大学 加須屋 誠氏(4)1991年11月23日(土)「彦根の仏像」
講師 本館学芸員 齋藤 望
−井伊家伝来の茶道具(2)−
茶碗・天目台と蓋置
期間 1991年7月21日(日)〜9月2日(月)井伊家伝来の茶道具シリーズの2回目。今回は、上記で紹介した茶碗のほか、天目台と蓋置をまとめて展示します。天目台は天目茶碗を乗せる台。蓋置(ふたおき)は茶釜の蓋を置く小さな具です。天目台にはさまざまな漆芸技法が駆使されており、蓋置に表現された形象は私たちの目を十分楽しませてくれるでしょう。
香
期間 1991年9月5日(木)〜10月22日(火)日本の香の文化は、仏教文化とともにもたらされたといわれます。香を焚くことにより、日常生活の場を清めたり、香を衣服に焚きしめたり、趣味として香を楽しんだりと、その文化は私たちの生活と、密接なかかわりを持ってきました。室町時代に成立する香道は、その香りを心ゆくまで鑑賞する技芸として発達しますが、風雅を愛する文学的な美意識とむすびついて、日本独自の伝統芸能として高められました。
この展示では、江戸時代の彦根での香の文化を、彦根藩伝来の資料のなかから紹介します。
■関連講座
●1991年9月28日(土)午後2時から
「彦根藩の香道」
講師 本館学芸員 母利 美和
場所 本館講堂●1991年10月20日(日)午後2時から
「香道に親しむ」
講師 光華女子短期大学 太田 清史氏
場所 本館講堂