彦根城博物館だより

Hikone Castle Museum News 16

1992.2.1


button 弥千代の雛と雛道具
button テーマ展薄茶器
button テーマ展大名の婚礼調度
button テーマ展染の美

華麗(かれい)で大揃い(おおぞろい)
弥千代の雛(ひな)と雛道具

image image
あかりをつけましょ ぼんぼりに…………

 3月の声も近くなると、町のそこかしこからこんな歌声が聞かれるようになります。3月3日にお雛さまや調度品のミニチュアを飾り、幼い女の子の健康と幸福を祈る風習は、年中行事の1つとして私たちの生活の中に定着しています。この雛祭り、いつごろ生まれたのでしょう。

 雛祭りの起源にはさまざまな説がありますが、一般的には古代上巳(じょうし)(3月はじめの巳(み)の日)に、長い冬の間につもりつもった穢れ(けがれ)を人形(ひとがた)に託して祓った(はらった)信仰的な行事と、平安時代に貴族の女の子の日常的な人形遊びであった「ひいな遊び」が結びついたものと考えられています。それは室町時代ごろに一応の形を整え、江戸時代に五節句の1つに加えられてしだいに一般にも普及し、今日みるようなはなやかなものとなっていったようです。

 ところで、ここに紹介する弥千代の雛と雛道具は、これまで述べてきた雛祭りのセットとはいささか様子が異なります。弥千代は、彦根藩13代藩主井伊直弼(いいなおすけ)の二女。彼女は安政5年(1858)に、高松藩世子(せいし)松平頼聰(まつだいらよりとし)のもとへ輿入れしますが、そのとき持参したのがこの雛と雛道具です。当時、婚礼にともなって持参する雛道具は、婚礼調度と同形式の道具組を揃える習わしがありました。したがって、雛が1対であるのに対して、雛道具は実に85件と大揃いになっています。道具主体のセットになっているといってよいでしょう。

 雛は次郎左衛門雛(じろうざえもんびな)の顔をもつ立雛(たちびな)です。引目鉤鼻(ひきめかぎはな)の丸顔に、松に重なる藤の文様をあしらった紙製の衣装をまとっています。一方、雛道具は婚礼調度の筆頭を飾る貝桶(かいおけ)にはじまり黒棚・厨子棚(ずしだな)・書棚の三棚(さんたな)、箪笥(たんす)、長持(ながもち)、化粧道具、香道具などなど。これらの雛道具は、いずれも黒漆塗の肌に松竹梅と井伊家の家紋である橘を金の平蒔絵(ひらまきえ)で散らしています。松は根引きの姫小松、竹は笹竹、梅は若い枝に梅の花が脹らんでおり咲きそめの花をみるような初々しさが漂っています。

(谷口)

このページのトップへもどる


テーマ展
−井伊家伝来の茶道具(3)−
薄茶器(うすちゃき)
 期間 1992年4月17日(金)〜5月11日(月)

image
象牙中次

 平成4年度第1回のテーマ展。今回は、昨年につづいて井伊家伝来の茶道具シリーズの3回目を開催します。テーマは薄茶器です。

 茶の湯では、茶の生葉を蒸したのち乾燥させて石臼で挽(ひ)いた抹茶(まっちゃ)を用いますが、この抹茶自体、濃茶(こいちゃ)と薄茶があります。古い時代には、茶の湯というと専(もっぱ)ら濃茶が賞用されたのですが、わび茶の流行につれ、味わいが淡泊で廉価(れんか)な薄茶もさかんに愛飲されるようになりました。このように濃茶と薄茶の2種が明確に区分されるようになると、それぞれの容器もまた独自のものを生み出すことになります。濃茶を入れる茶入(ちゃいれ)と、薄茶を入れる薄茶器です。

 井伊家には100点に近い薄茶器が伝来しています。それは棗(なつめ)と中次(なかつぎ)を基本形として多種多様のものがあり、材質も漆器のほか、木地(きじ)・象牙(ぞうげ)・金属・一閑張(いっかんばり)など豊富です。これらの作品の中でも特に目につくのが、武家茶道の創始者片桐石州(かたぎりせきしゅう)好みのもの。さすがに武門の茶道具だと感じますが、そのほかにも13代藩主井伊直弼(いいなおすけ)好みや、古く武野紹鴎(たけのじょうおう)好み・千利休(せんのりきゅう)好み、そして表千家・裏千家の歴代宗匠好みなど。名だたる茶人・茶家の好みものがそろっています。期間中の5月10日(日)には本館木造復元棟で茶会も催します。あわせてご参集ください。

このページのトップへもどる


テーマ展
大名の婚礼調度
 期間 1992年1月23日(木)〜2月24日(月)

 江戸時代の武士は、上は大名から下は武家奉公人にいたるまで、おのおの厳しい格式によって統制されていました。婚礼もまた、その例にもれません。婚礼は、結ばれる両人をこえて両家の大切な行事であり、家の格式に則してとり行われました。したがって、婚礼調度も家格相応に前もって準備されました。大名家の場合、婚礼調度として質量ともに最高のものが制作されたのは言うまでもありません。器種は、化粧具・飲食具・遊戯具それに運搬具といったものまで含まれていました。いずれもその表面には、統一された意匠のもと、さまざまな蒔絵(まきえ)手法を用いて豪華絢爛(ごうかけんらん)に加飾され、要所には家紋が散らされました。

 このテーマ展では、井伊家に伝わる婚礼調度の中から、彦根藩最後の藩主井伊直憲(いいなおのり)の正室に迎えられた有栖川宮宜子(ありすがわのみやよしこ)の婚礼調度をまとめて展示しています。

このページのトップへもどる


テーマ展
染(そめ)の美
−井伊家伝来能装束から−  期間 1992年5月14日(木)〜6月15日(月)

 能の装束は、染織技法や文様の一大宝庫です。ここには、日本の染織芸術のエッセンスが凝縮しているといえましょう。技法の観点からみれば、唐織(からおり)や厚板(あついた)などの「織(おり)」の豪華さも見ごたえがありますが、直垂(ひたたれ)や素襖(すおう)、狂言肩衣(かたぎぬ)などにあらわされた「染(そめ)」の美も見逃すことのできない味わい深い魅力をそなえています。

 この展示では、自然な風合で人々を魅了する「染」の美を紹介します。

このページのトップへもどる


目次