1992.8.1
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黒漆塗平目地葵紋菊蒔絵鞍 |
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将軍からの贈りもの
黒漆塗平目地葵紋菊蒔絵鞍
(くろうるしぬりひらめじあおいもんきくまきえくら)
近年まで、馬は人々の生活にとって重要な動物でした。農耕や交通・通信・運搬・そして戦(たたかい)にまで馬は人と深く関わっていたのです。現在・日本国内には、約6万頭の馬が飼育されているといわれますがそのほとんどが競走馬です。競馬場は馬を身近に見られる数少ない場のひとつで、最近では若い女性の間でも、競馬観戦が流行しています。またちがった意味で馬が身近になったといえるでしょう。
馬には人の意思を伝達し操るために馬具を装着します。なかでも馬具の主体となる鞍は奈良時代に中国から伝わった唐鞍(からくら)の形態すなわち前輪(まえわ)・後輪(しずわ)が居木(いぎ)をはさむ形を基本に、江戸時代まで引き継がれてきました。しかし明治時代以後、体格の大きい西洋馬種が本格的に取り入れられたため、馬具、特に平安時代から続く和式鞍は馬の体型に合わなくなり、西洋式の革で造られた機能的な鞍、つまり今日乗馬に用いられる形の鞍へと替わりました。
上図の鞍は、江戸時代の代表的な水干鞍(すいかんぐら)です。水干鞍は唐鞍をアレンジした鞍で、そこに施された華やかな装飾が見どころの1つとなっています。この鞍は前輪・後輪に大輪の菊と葵の紋が、金銀の高蒔絵(たかまきえ)の技法を駆使してあらわされています。きらびやかな菊が、鞍全体の雰囲気を華やかに盛り上げているといえるでしょう。
菊は別名、齢草(よわいぐさ)とも言われ、齢を刻む草の意として、長寿にちなむ名で親しまれています。奈良時代に、中国大陸より伝えられ平安時代に入ってからは、特に宮廷の人々を中心に親しまれていたようです。そして菊を題材にした和歌が数多く詠まれ、そのほとんどが不老長寿を詠んだものでした。鎌倉時代以降には武具の装飾にも使われはじめました。乱世の時代のため、菊の意にあやかり、武運長久を願ったのでしょう。
この鞍の前面にある葵紋は、この鞍が将軍家からの拝領品であることを示しています。居木裏に「寛文2年(1662)5月3日」「政也(花押)」の刻銘があり、江戸時代の幕府御用鞍打師、辻山城守政也の作であることがわかります。
江戸時代前期に品種改良により栽培されるようになった大輪の菊が、この鞍の装飾に取り入れられていることからみて、鞍の制作と同時期に蒔絵もほどこされたのだと思われます。
井伊家が拝領した年代など詳しいことはわかりませんが、鞍のほかにも轡(くつわ)をはじめとして附属の馬具一式が揃っていることからすれば、おそらく名馬とともに拝領したのでしょう。
井伊家にはこのような将軍家から拝領した鞍や、定紋を捉えた正式の黒塗りの鞍、華やかな装飾をほどこした鞍など、約50余点が伝えられています。
(山岸)
佐和山城とその時代
期間 1992年10月17日(土)〜11月23日(月)
佐和山のある湖東地方は、東山道・北国街道そして琵琶湖をひかえた交通の要衝であり、戦略上の拠点として、古来、幾度となく戦乱の舞台となりました。中世に入り、近江を治めた佐々木氏が、江南の六角氏と江北の京極氏に分かれると、両雄の勢力の境に位置する佐和山にも要害の地として城が築かれ、在地の小領主を巻き込んだ攻防戦が繰り返されました。そして戦国時代、京極氏の被官から勢力を伸ばした浅井氏と、尾張から政権統一をめざした織田信長の間で、佐和山城争奪戦が展開されます。その後、信長と豊臣秀吉の下でしばしの小康状態を迎へ、石田三成が城主となって城の規模も拡大されますが、関ヶ原の戦い後に落城し、やがて廃城と化します。
この企画展では、佐和山城の盛衰を縦糸に、ゆかりの人物を横糸に織りなして、佐和山城とその時代を魅力的に紹介し、あわせて現在の佐和山城跡にも一光を投じようとするものです。この機会に、ぜひご静観ください。
−はたらく女性のすがた−
歴史の中の女性
期間 1992年7月19日(日)〜8月31日(月)このテーマ展は、絵画にあらわされた女性の働く姿や、古文書に見る女性の法的立場・相続・財産のあり方を通じて、江戸時代の女性が社会の中ではたした役割を考えて見たいと思います。
現代社会の中での男女の役割を、あらためて見つめなおす機会となれば幸いです。
龍
−さまざまな表現−
期間 1992年9月3日(木)〜10月13日(火)中国では、想像上の動物で有名なものに龍と鳳凰(ほうおう)、それに麒麟(きりん)がいます。これに亀を加えて四霊といい、古来最高の吉祥とされてきました。その中でも龍は天子の象徴とされ、非常に重要なものとして捉えられていました。日本の古典神話の上でも、水神・海神として神聖視されています。
現実に存在しないものであるが故に、そこから色々な伝説が生まれ、作品として表現する際にもそれだけイメージが広がったと思われます。実際、その種類も数も豊富で、迫力があり圧倒される大幅の絵画もあれば、吉祥の文様としてやきものなどに精緻に描かれたり、勇猛果敢な動物として刀装具の文様に使われたりと、実に多彩な表現方法があります。
このテーマ展では、そういった人の想像力と表現力の豊かさとを、ひとつのモチーフに目を向けて鑑賞していただきたいと思います。