1993.8.1
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紫色被せ切子徳利 |
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和製ぎやまん
紫色被(き)せ切子徳利(きりことっくり)
光線の具合で、その表現が微妙に変化するガラス工芸品。透明度に優れたガラスは、古くから人々に驚きと興趣をもって受け入れられたことでしょう。わが国でもっとも古いガラスの遺品は、すでに縄文時代終末期の遺跡から発見されています。しかし、日本人が本格的にガラス製品を製作するようになるのは、遥(はる)か後の江戸時代に入ってからのことです。
16世紀になって、ヨーロッパとの交易が盛んになるとともにもたらされるようになった南蛮渡来のガラス工芸品は、異国情緒あふれる珍器として人々の間でもてはやされました。そのことに刺激を受け、やがて長崎・大坂・江戸などの各地でガラス細工が開始されます。こうして制作が始まった日本製ガラスは、当時「びいどろ」と総称されました。「びいどろ」はポルトガル語でガラスを意味しています。しかし、「びいどろ」は、むしろ中国宋時代のガラス製法の流れを引く鉛ガラスで、今日のソーダ石灰ガラスとも異なっていました。もろくて壊れ易く、無色であっても原料に含まれる鉄分のために、生地(きじ)がわずかに緑または青色をおびる特色がありました。
このような「びいどろ」に対して、南蛮渡来の質の高いガラスは当時「ぎやまん」と呼ばれました。「ぎやまん」はポルトガル語のダイヤモンドを語源にしていると推定されています。そして、江戸時代後期になると、「びいどろ」の生地に紫呉須(ごす)を添加して、「びいどろ」特有の色を消した高級な無色ガラスやそれにカットを施した切子ガラスなどが、伝統的な「びいどろ」とともに作られるようになります。これを「和製ぎやまん」と称しました。
表紙の写真は、井伊家に伝わる薩摩系切子の徳利です。「和製ぎやまん」特有の厚手のガラス生地の外側に紫色の色ガラスを被せ、冷却後に紫色ガラスをカットしたもの。栓(せん)は宝珠形で、上部に紫色をのせて刻んだ洒落(しゃれ)た作りとなっています。その作品を納めた箱には「青色アリ義山(ぎやまん)徳利」の墨書が記されています。薩摩系切子を代表する作品の1つと言ってよいでしょう。井伊家にはこのような「和製ぎやまん」のほかにも左の写真のような南蛮渡来の「ぎやまん」や「びいどろ」が幾つか揃っており、江戸時代のガラス技術を知る上でも好資料となっています。
(谷口)
琉球王朝の美
期間 1993年10月23日(土)〜11月23日(火)日本列島の最南端に位置する琉球列島は、本島を中心に宮古・八重山諸島など大小200余りの島々からなっています。この琉球にはじめて統一王朝(第一尚氏王朝)が樹立されるのは15世紀に入ってからのことで、それは第二尚氏王朝へと受け継がれていきます。第二尚氏王朝は、1470年、第一王朝6代の尚泰久の側近であった金丸が、政変により王位について尚円と称したのに始まります。以後、1609年の薩摩による琉球入りを経て、1879年に明治政府が実施したいわゆる「琉球処分」まで、およそ400年にわたる長い間、王権を維持しました。この間、中国の冊封(さっぽう)を受ける一方で、1609年以降は薩摩を通じて間接的に日本の幕藩体制にも組み込まれるという両属の形をとりながら、南島に独自の歴史と文化を生み出しました。
この企画展では、王統を継ぐ尚家伝来の玉冠や衣裳・紅型(びんがた)などの染織品をはじめ、楽器・漆器・陶磁器など、第二尚氏王朝の精華を余すところなく紹介いたします。この好機にぜひご清観ください。
■講演会
琉球舞踊 ブクブク茶
鞍と鐙
期間 1993年8月19日(木)〜9月20日(月)武士の道は弓馬の道とも言われるように、武士にとって弓術と馬術は大切な修養のひとつです。泰平の世を迎えた江戸時代でも馬は武士の日常生活や儀礼の中で重要な役割をはたしています。そこに用いられる馬具もその用途により異なります。江戸城登城のような武家儀礼には定紋(じょうもん)を据(す)えた正式の黒塗りの鞍が基本でした。一方で常用の鞍には好みに応じて蒔絵技法を駆使した華やかな装飾鞍が使用され、美術工芸品としても評価を高めました。
このテーマ展では彦根藩主井伊家に伝来する鞍や鐙などをまとめて展示します。その用途とともに、蒔絵など漆工芸の装飾美をご覧いただければ幸いです。
縞・格子
−井伊家伝来能装束から
1993年9月23日(木)〜10月19日(火)能装束には、さまざまな染織技法が駆使され、多彩な文様があらわされます。その中から、今回取り上げるのは、縞(しま)と格子(こうし)です。
縞と格子は織物のデザインとしては、もっとも基本的なものですが、線の太細や間隔、色彩の取り合わせなどを変えることにより無限の変化を生じます。多くの種類が生み出され、一見するとなにげなく見えても、そこにはさまざまな表情があります。江戸時代以来「粋(いき)」な縞柄(しまがら)として庶民にも親しまれましたが、能装束にも好んで用いられ、多様な展開をみることができます。
このテーマ展では、井伊家伝来の能装束の中から水衣(みずごろも)、厚板(あついた)、熨斗目(のしめ)などに縞や格子の魅力を探ります。