彦根城博物館だより

Hikone Castle Museum News 28

1995.2.1


button 花鳥図御簾屏風
button テーマ展桜の美
button テーマ展炭道具
button テーマ展雛と雛道具

絵画と工芸とのあいだ
花鳥図御簾屏風
(かちょうずみすびょうぶ)

image image image

 一般に博物館で美術作品を分類するとき、絵画や書、工芸品、染織品などに仕分けされています。屏風についていえば、絵が描いてあれば絵画、字が書いてあれば書に分類されることになります。至極当たり前のことじゃないかと思われるでしょうが、今回紹介する作品の場合は少々複雑で、理屈どおりにはいきません。

 その理由は屏風の中にはめ込まれた簾(すだれ)。絵が描いてあるので、大枠としては絵画に分類してよいのでしょうが、簾の部分を重視すると工芸品としての要素が強くなってしまうのです。簾を張ったいわゆる「簾屏風」といわれるものは、京都国立博物館の俵屋宗雪の菊図屏風や、滋賀県長浜市の大通寺に伝わる花鳥山水図屏風などが知られますが、全国的には遺品は決して多いとは言えません。しかも、本作品の場合、簾の部分にまで絵を描いているという点でさらに希少な作品といえるでしょう。

 大通寺の屏風の場合、江戸期には住職の裏方が簾越しに参詣したという伝えがあります。なるほど、裏面は金銀箔押の市松地に極彩色で絵が描かれています。しかし、残念ながら、はじめからこういった用途のために制作されたものであるかは明らかではありません。

 では、本館の屏風の場合はどうでしょう。屏風の裏面を見てみると、銀箔地に雀形の形押がされています。通例の屏風によく見られるもので、特に変わったところはありません。簾部分の裏面に目を移すと、周囲と連続するように同形の雀形が描かれていることに気づきます。ここから、裏面は普通の屏風と同じようにしようとする意識が見てとれるのではないでしょうか。つまり、裏はあくまでも屏風の裏として考えるということで、簾としての機能はあまり考慮されていなかったと思われるのです。もし考慮されていたとすれば、簾の裏には何も描かないか、もしくは周囲とは違った絵を描いていたのではないでしょうか。簾をはめ込むということは、むしろ、工芸的、装飾的効果がねらいであったと考えた方が自然であるように感じられます。

 本屏風は、縁裏に「寛政十二年庚申二月吉日 東新町大工惣十郎是打」という墨書が確認され、寛政12年(1800)に彦根で表具されたことが明らかになりました。屏風の制作過程を考える上でも貴重な1品といえるでしょう。

(高木)

このページのトップへもどる


テーマ展
桜の美
 期間 1995年3月9日(木)〜4月11日(火)

image

 離れて眺めるとその華やかさ、艶(あで)やかさに圧倒され、間近でひとつひとつを見ると繊細で可憐な姿に心がなごむ−桜は、見る視点により印象がまるで異なる不思議な花と言えるでしょう。
  みわたせば 柳桜をこきまぜて 宮こぞ春の 錦なりけり
これは、古今和歌集に収められた素性(そせい)法師が詠(よ)んだ歌です。秋の錦は山にあることは皆が知っていることだが、春の錦はほかでもない、この都であることに気付いたと言っています。桜を大きな視点で捉えている例といえるでしょう。

 また、満開のときには華やいだ雰囲気をかもしだす一方で、散りぎわにははかなさや潔(いさぎよ)さを感じさせたりと、桜は私たちに実に多くの表情を見せてくれます。

 このいくつもの顔をもつ桜は、絵画に工芸にさまざまな姿で表現されてきました。吉野(よしの)、醍醐(だいご)など名所絵の中で誇らしく咲く豪奢(ごうしゃ)な花として、あるいは枝垂桜(しだれざくら)という曲線の美しさを特色とする優美な花として、さらには5つの小さな花弁をもつ細やかな花として。

 本展では、井伊家伝来品を中心に、絵画、能装束、工芸品などの美術品に見られる多様な桜の姿を観賞していただきたいと思います。

このページのトップへもどる


テーマ展
井伊家伝来の茶道具 (6)
炭道具
 期間 1995年4月14日(金)〜5月16日(火)

image

 井伊家伝来の茶道具シリーズも6回を数えることになりました。茶の湯の世界において、炉や風炉に炭を組み入れる際の作法を炭手前(すみでまえ)と言い、そこで用いる道具一式を炭道具と称しますが、今回はこの炭道具に焦点を当てます。

 炭道具は、炭斗(すみとり)・羽箒(はぼうき)・火箸(ひばし)・鐶(かん)・釜敷(かましき)・灰器(はいき)・灰匙(はいさじ)など実に多彩な道具で構成されています。火箸以外はあまり聞きなれないものばかり。しかし、一見すれば、名前は知らなくとも何となくその用途を想像できるものがあります。近年まで、私達の身の回りで使われてきたものがかなりあるからです。茶の湯の世界が、日常品を随分取り込んでいることが、おわかりいただけるものと思います。

 もちろん、一つ一つをよくよくご覧いただくと、やはり違っています。いずれも吟味された素材を用いて、たいへん丁寧にセンス良く仕上がっているのです。はるばる中国から伝来した唐物(からもの)と称される作品も少なくありません。

 今回のテーマ展では、茶の湯を支える地味な作品群の中に、キラリと光る美の表情を発見していただければ幸いです。

このページのトップへもどる


テーマ展
雛と雛道具
 期間 1995年3月6日(月)まで

image
弥千代の雛道具 碁盤

 好例となりました雛と雛道具展。今回も、彦根藩13代藩主井伊直弼の二女弥千代の雛道具85件を中心に展示いたします。

このページのトップへもどる


目次