彦根城博物館だより

Hikone Castle Museum News 36

1997.2.1


button 紙本金地著色風俗図
button 彦根藩士の人事録「侍中由緒帳」
button 企画展

「彦根屏風」とは?
紙本金地著色風俗図(彦根屏風)

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 「彦根屏風」とは、一体どんな絵なのですか---最近、博物館へこの種の問い合わせが少なくありません。彦根の景を描いたものと思っている方もいらっしゃるようです。

 描かれている内容や画風よりも、「彦根屏風」という名そのものが前面に出ている、といったところでしょうか。

 『広辞苑』を繙(ひもと)いてみると、そこに「彦根屏風」の項がありました。

 「彦根藩主井伊家に伝わった六曲屏風。金地彩色、江戸初期の男女遊学の様を写す。初期風俗画の優作。」とあります。

 美術作品を知るには、実物に接するのに越したことはありません。が、あまり美術に興味のない方でも、手元にある辞書である程度彦根屏風の雰囲気をつかむことができるのだと分かったことは、ちょっとした驚きでした。

(高木 文恵)

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彦根藩井伊家文書から
彦根藩士の人事録
「侍中由緒帳(さむらいじゅうゆいしょちょう)」

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侍中由緒帳(活字本)

 江戸時代の大名家では、一般に家臣団を管理するために家臣の人事録を作成しました。家臣の名前・禄高(ろくだか)・地位・役職などを記す点では、江戸幕府の武鑑や諸家の分限帳にあたりますが、内容的にはもう少し詳しい、いわゆる奉公書と呼ばれる家臣の履歴史料です。

 彦根藩井伊家文書の中にも、「侍中由緒帳」と題する家臣の履歴史料群があります。現在80冊が伝存し、筆頭家老から扶持取の(足軽は含まない)藩士諸家のものが収められています。彦根藩では、元禄4年(1691)5月、4代藩主の井伊直興(いいなおおき)の命により作成されました。内容は、井伊家へ召し出された年、知行俸禄(ほうろく)の増減変化、家督相続の年月と実子か養子か、勤めた役職、特別・臨時の役務、褒賞(ほうしょう)・処罰の履歴などで、藩士各家より藩士の監視役である御目付へ提出しました。御目付方では、提出されたものを書写し、石高の高い順に綴じ、藩士名簿の基本台帳として保管され、家臣の把握・管理がされました。

 基本的な内容の項目は同じでしたが石高、役職によって記述内容に精粗があり、記述量も石高の高い家の方が多くなっています。内容も石高1万石の筆頭家老木俣家などは、歴代藩主が家督相続の御礼に江戸城に登城する際に御供し、将軍に御目見えするなど、藩政の中枢を担っている家で、藩主により近い存在として特徴的な記述をもちます。これに対して、150石の中級クラスの家では、同量の丁数で15家が一冊に綴じられており、記述も家督相続や、勤めた役職の年月日などが中心でいたって簡素なものです。元禄4年以降、幕末まで2年から5年に1度書継ぎが命じられ、特に知行俸禄の増減など変更のある家のみ提出しました。

 ここで紹介しました「侍中由緒帳」は、江戸時代の大名井伊家にとっては家臣を把握し、管理するために重要なものでした。今、現代の私たちにとっては、彦根藩家臣団の研究には不可欠なものであって、ほかの家臣団や彦根藩の研究をする上でも、もっとも基礎となる史料といえます。また、ほぼ江戸時代を通して伝存する史料群としても大変貴重なものです。

 当館史料室では平成6年3月に彦根藩史料叢書として「侍中由緒帳」の一部を翻刻(ほんこく)したものを発刊しました。以来、有志の方々の協力に支えられながら、毎年1冊づつ刊行し、現在計49家分を刊本3冊におさめ、刊行しています。平成9年3月には4冊目を発刊予定です。今後継続的に翻刻を行い、広く活用していただけることが期待されるものです。

(頼 あき)

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企画展
開館10周年記念企画展
宴〔うたげ〕
 期間 1997年4月19日(土)〜5月19日(月)

 人生の節目の行事である冠婚葬祭、あるいは年のはじめを祝う新年会から年の終わりを締めくくる忘年会まで、私たちは1年間に数多くの宴会に出席します。このような宴は、はるか遠い昔に生まれ、社会の変化にともなって少しずつ様相を変えながら、日本文化史の一側面を形づくりつつ今日に連綿と伝えられてきました。

 宴は、もともと神前で神に捧げられた酒や食物を、一同が神とともに飲食する行事であったと考えられています。とりわけ酒は、飲むほどに高揚し、神と人が交信し一体化する上で大きな作用を果たしたことでしょう。人々は酒を飲み交わし、歌を歌い、舞い踊りました。

 こうした習慣は、やがて貴族や武士の年中行事や儀式の中にも受け継がれていきます。それは威儀を正した宴であるとともに、酒食を媒介に人々の結束を計るものでもありました。一方で、人々がさまざまに集い、宴を楽しむことも行われるようになりました。たとえば、和歌や連歌(れんが)の会が広く催されたのは、その一例です。また、今日、日本の伝統芸能として定着している茶・花・香なども、もとはこのような人々の寄り合う会所(かいしょ)の中から生まれ、芸能にまで高められたものです。

 今回の企画展では、宴の文化史を縦糸に、そこで用いられた宴の道具を横糸に、あでやかな宴の世界を織り上げます。

 今春は、本館が開館して10周年という節目にあたり、また、彦根城天守が平成の大修理を終えて公開される年でもあります。この好機に、全国各地に伝来する宴にゆかりの優品を一堂に会して、彦根の地で春爛漫の「宴」を演出したいと思います。ぜひ、ご来館ください。

(谷口 徹)

■関連講演会

1997年5月10日(土)
「宴の文化史」
  滋賀県立大学教授 村井 康彦氏

1997年5月17日(土)
「酒の器」
  文化庁美術工芸課長 鈴木 規夫氏

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