彦根城博物館だより

Hikone Castle Museum News 81

2008.6.1


button 平成20年(2008年)6月、井伊直弼と開国150年祭開幕
button テーマ展シリーズ「直弼発見!」巻の1 井伊直弼 大老への道のり
button テーマ展弓矢の道−井伊家伝来の武具−
button テーマ展シリーズ「直弼発見!」巻の2 開国の時代と彦根藩
button テーマ展人権学習シリーズ 江戸時代の医療
button 研究余録 金亀玉鶴
button 直弼のこころ−井伊直弼ゆかりの作品(1)
button ◆特集コーナー「直弼のこころ」◆

平成20年(2008年)6月、井伊直弼と開国150年祭開幕
彦根城博物館では、特集コーナー「直弼のこころ」・シリーズ「直弼発見!」が始まります。
彦根藩13代藩主井伊直弼〔いいなおすけ〕が江戸幕府大老となり、日米修好通商条約を締結した安政5年(1858年)から数えて150年。平成22年(2010年)3月までの2年間にわたり、日本の開国に大きな役割を果たした直弼の人物像を、彦根市から全国へ発信していきます。

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テーマ展
シリーズ「直弼発見!」巻の1 井伊直弼 大老への道のり
平成20年(2008年)5月23日(金)〜6月24日(火)
展示室1

 大老就任以前の代表的作品や、攘夷を祈願し伊勢神宮外宮に奉納した刀「陸奥大掾三善長道〔むつだいじょうみよしながみち〕」を展示し、直弼の生い立ちから幕府大老に就任するまでの軌跡をたどります。

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テーマ展
弓矢の道−井伊家伝来の武具−
平成20年(2008年)6月27日(金)〜7月23日(水)
展示室1
写真


 弓矢は戦場における武器の主力でした。16世紀中頃になると、その座を鉄砲に譲りますが、弓術は心身を鍛練する技として、江戸時代を通じて盛んに行われます。武家の統領である大名家に伝わった様々な弓の道具をご覧ください。
 
●ギャラリートーク  6月28日(土) 午後2時〜 学芸員 坪内 広子

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テーマ展
シリーズ「直弼発見!」巻の2 開国の時代と彦根藩
平成20年(2008年)7月26日(土)〜9月1日(月)
展示室1
写真


 幕末の日本に西洋諸国が開国を求めてやってくるようになると、江戸幕府は海防を強化します。この時、江戸湾の守りを担った譜代藩の1つに、彦根藩がありました。彦根藩は三浦半島(神奈川県)に軍勢を出し、西洋の軍事技術を取り入れて砲台を築きます。ペリー来航の際も警備の任に就き、開国へ向かう時代にいち早く直面した彦根藩の姿を紹介します。
 
●ギャラリートーク  7月26日(土) 午後2時〜 学芸員 野田 浩子

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テーマ展
人権学習シリーズ 江戸時代の医療
平成20年(2008年)9月4日(木)〜9月29日(月)
展示室1
写真


 町や村に医者が定着し、医療が地域に普及する一方で、人びとが現在よりもはるかに病いの脅威にさらされていた江戸時代。当時の医療技術や、医者の免許制度、医者と患者との関係など、江戸時代の医療のあり方を通して、現代の医療についても考えます。
 
●ギャラリートーク  9月6日(土) 午後2時〜 学芸員 渡辺 恒一

 平成20年度は、シリーズ「直弼発見!」巻の6まで開催します。
巻の3 井伊直弼の茶の湯−一派創立と茶会記−  10月2日(木)〜10月28日(火)
巻の4 井伊直弼の家族 10月31日(金)〜12月1日(月)
巻の5 弥千代の雛と婚礼調度 平成21年2月6日(金)〜3月10日(火)
巻の6 井伊直弼の甲冑と刀剣 3月13日(金)〜4月14日(火)
 巻の7〜12については、平成21年(2009年)3月1日発行の84号で紹介します

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研究余録 金亀玉鶴
井伊直弼の国学〔こくがく〕研究
写真
国学書評(部分)
重要文化財 彦根藩井伊家文書

 井伊直弼の腹心長野義言〔よしとき〕は、京都での活動を中心に直弼の大老政治を支えた人物ですが、同時に直弼の国学の師でもありました。直弼が彼から学んだ国学の世界観、とくに朝廷と幕府の関係などの政治観が直弼の現実の政治に影響を及ぼしたことは、従来の研究においても指摘されているところです。
 本来、和歌に関心のあった直弼は、弘化元年(1844)頃に国学に関心を持ち始め、義言の教えを受けながらも独自に勉学を進め、国学理解を深めていきます。同2年には、直弼は義言に国学の書物執筆を依頼し、同年7月4日には、長野から国学書「古学答問録〔こがくとうもんろく〕」の草稿が彦根に届けられました。同3年に彦根藩の世嗣となった直弼は、江戸出府後も「古学答問録」を折に触れて読み、国学研究を行いました(以上の記述は、母利美和『井伊直弼』[吉川弘文館、2006年]に拠ります)。
 ここでは、上記のような経過が判明している直弼の国学研究について、一つの史料を手がかりに、さらにその具体的な様相を探ってみたいと思います。
 彦根藩井伊家文書に「国学書評〔こくがくしょひょう〕」と文書名が付された、全長6m余りの巻物が伝わっています(写真)。この文書には、「国学書評」という文字の記載はなく、文書名は文書整理時に付されたものです。巻物には直弼自筆の書付10枚が表装されています。書付の題名のみを以下に列記すると、(1)「本居著述目録書〔もとおりちょじゅつもくろくがき〕」の包紙1枚と目録2枚、(2)「中瀬故事〔なかつせこじ〕」、(3)「桃子故事〔もものみこじ〕」、(4)「本書出書目〔ほんしょでるしょもく〕」、(5)「夜食国之論〔よるのおすくにのろん〕」、(6)「幽顕之論〔ゆうけんのろん〕」、(7)「幽顕ノ二気ト昼夜・・・・」の書付、(8)「昼夜表裏之論〔ちゅうやひょうりのろん〕」・「付録難問〔ふろくなんもん〕」となります。(1)は、国学者本居宣長〔もとおりのりなが〕らの著作物リスト、(2)と(3)は「古事記〔こじき〕」の文章を写し注を付したもので、(3)は有名な伊弉諾尊〔いざなぎのみこと〕と伊弉冉尊〔いざなみのみこと〕の黄泉〔よみ〕の国の話です。(4)は「本書」と呼ぶ書物で引用される文献、(6)〜(8)はそれぞれの論に考証、批判を加えた文章です。
 この巻物だけを見ていても、国学に関するものとわかるものの「本書」自体が不明であるし、また(5)〜(8)はいったい何を対象に考証しているかが分かりません。
 この点を解決する手がかりとなるのが、嘉永2年(1849)4月に直弼が義言にあてた手紙です。この手紙で、「古学答問録」の5つの良説を褒め、疑問点を「本書」に貼紙し、別紙に難問するので示教を願う、としています。また、この手紙には付札が貼られ、そこには「別紙を出す心得だったが、今少し不吟味であるので、次の機会に尋ねる。別紙の主意は「幽顕と昼夜の二気の論」を第一として難問に及ぶ」旨が記されています。さらに、手紙には書目目録が添えられています。この目録掲載の書名が前述(4)の目録のそれと一致します。そして、別紙で直弼が尋ねようとしている「幽顕と昼夜の二気の論」は、前述(6)(7)と対応しています。
 ここから「国学書評」で「本書」とされる書物が、上記の義言の著作「古学答問録」であることが判明します。実際、彦根藩井伊家文書に現存する「古学答問録」二・三・四巻には、直弼筆の付札が各所に貼られており、直弼の手紙にあるとおりです。
 つまり、「国学書評」は、直弼が「古学答問録」を学び、また、「古事記」の原典にもあたり、自らも義言による考証や理解を検討する過程で、直弼自身が作成した、いわば研究ノートが一巻に仕立てられたものだったのです。
 直弼は、嘉永2年4月に義言にあてた手紙のなかで「古学答問録」について次のように賞賛しています。「古学答問録はいそしみの中よりも、をりをりとり出し見侍るに、こは一方ならぬ大人〔うし〕(義言のこと)いさを(=勲)にて、今までの国学者流のひとしなみには侍らず。いといと力を得し事すくなからず。そのうれしさは言葉にもつくし難くこそ」。
 直弼が「古学答問録」を仕事の合間をぬって繰り返し読み、「国学書評」にみたとおり疑問点を書き記し整理し、集約しては義言に質問をし、返答の意見を得る。このような直弼の国学の学習方法がわかってきました。
 ここまでくると、直弼が行った学習内容や検討内容、思考方法がどのようなものであったのかが問題となってきますが、それらは次なる課題です。

(渡辺 恒一)

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直弼のこころ−井伊直弼ゆかりの作品(1)

 

写真
茶湯〔ちゃのゆ〕をりをり草〔ぐさ〕
井伊直弼作

 茶の湯では、季節や時刻の折々に、さまざまな茶会を催します。刻一刻と変化する四季の風情を楽しみ、主客が集うひとときに託された思いを、茶を点〔た〕て飲み交わす瞬間に凝縮する茶会は、茶人にとって至上の時間と言ってよいでしょう。
 彦根藩13代藩主井伊直弼(1815〜1860)が著した『茶湯をりをり草』は、折々の茶会に際して、茶会を催す亭主と招かれた客が、どのような心構えで、どのような振る舞いをすべきかを記したものです。埋木舎で過ごした青年時代から茶の湯に親しんだ直弼は、自ら流派を立て、多くの茶会を開いた大名茶人でもありました。茶の湯の正月とも称される「口切会」(その年の新茶を初めて用いる茶会、11月)や「夜会」(夜、灯明の明かりで行う茶会)といった季節ごとの茶会、「忌会」(追善の茶会)や「水遠来会」(名水を入手して催す茶会)といった主客の出会いから生まれる茶会など、28の茶会について、茶会の趣に応じた茶室や道具の準備、主客の応対などを書き記しています。
 揺れ動く世情を離れ、茶会の場で生まれた「一期一会」の交わりを大切にしようと心を配る直弼の姿がうかがえるような著作です。

本作品は、特集コーナー「直弼のこころ」(展示室5)にて、平成20年(2008年)6月25日〜7月22日に展示します

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◆特集コーナー「直弼のこころ」◆
展示室5  平成20年(2008年)5月21日〜

 13代藩主井伊直弼は、幕末の大老として国政を担った政治家として知られる一方、茶の湯や国学、禅、居合などに真摯に取り組む、文化人としての面を併せもっていました。本コーナーでは、様々な直弼ゆかりの作品を集め、その人となりを紹介します。
※井伊直弼と開国150年祭期間中は、およそ1月毎に展示替を行い、次々と作品が登場します

 

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